「そして僕は途方に暮れる」を観てきました

3月19日(月)、この日は夜1回公演でした。藤ヶ谷さんの激やせっぷりがファンの間でも話題になっていたかと思うんですが、パンフでも他の役者さんたちにやつれてるやつれてる言われていました。それくらい追い込まれたんだろうなぁっていう感じでしたがよかった!っていうような内容とはちょっと違うんだけど、観られたことが本当によかったと、そう思える作品でした。

 

ネタバレになりますけど、主人公の裕一(藤ヶ谷さん)のように最初はたいして逃げている感覚もなく、何となく目の前の面倒なことから避けているうちにあらゆることがどんどん面倒な方向に倒れて如何ともしがたくなるというのは現実でもあるでしょうし、自堕落で何も成し遂げていないのになぜか上から目線で「こうだよああだよ」みたいについ語ってしまうってのもあるあるだし、でも立場が上の人に対しては自分の意見をすぐに曲げちゃったりていうのも現実感。

 

一見周りの人に恵まれているかのようにも見えるんだけど、結局彼女と友人には裏切られ、母親は宗教にはまってしまい、姉にはお金のことばかり言われ、父はこれからもきっと逃げ続けるのだろう・・・っていう。何気に一番いい人は先輩だったのかしらね。でもそれもうわべだけの付き合いだからこその親切心とでもいうのか、とにかく絶望するほどでもないけど小さな小さなほころびの連続で追い込まれていく裕一がただのクズというんでもなくてあーすごい現実的って気がした。

 

あ、とか、えっと、とかの細かな台詞もすべて台本にあったようですが、間の取り方が絶妙且つ台詞を言っていない時の演技がすごい光っていた。ジャニーズという注目されて輝いて当たり前の世界で生きていてあの表情とか気配の漂わせ方とかがすごい。藤ヶ谷さんってこういう普通の青年ハマるんだなーと意外でした。

 

最終的に裕一は父のように「面白くなってきやがったぜ」と逃げ続けることを受け入れたかのようなラストなのですが、あのコクーンの搬入口を開ける演出って言うとわたしのなかでは太陽2068のラストみたいに、大人からしたら無謀だってわかってはいるんだけど若者が前に向かって駆け出していく感じがポジティブな雰囲気になるから、いつかはまた歯車ががちっと合う日が来るのかなという小さい希望みたいなものは感じました。

 

面白かった!とかイライラした!とかじゃなくて、何とも言えない日常のやり取りをぐぐっと凝縮してみたような、でもわたしとしては観劇後はモヤモヤした気持ちにはならなかったです。爽快ではもちろんないんだけど、やはり目の前にあることに何かしらアプローチは必要なんだなっていう教訓めいたものを感じました。まぁその一つに「逃げ」っていう選択肢ももちろんありなんだろうけどその判断って難しいよね・・・。

 

ほんとに追い込まれ藤ヶ谷さんがむしろ輝いていて、早くまた藤ヶ谷さんの舞台を観たくなりました。

 

あとこの舞台で歌ってた裕さんが現実だったことが未だに感心してしまう。